東京の歴史はヒョンスと共に。
シーズンの真っ只中。何が起こるかは分からない。それでも目指す方向を合わせることはできる。
チャンヒョンスがキャプテンマークを巻く意味を今一度考えてみたい。
日本中が歓喜に沸いた2018ワールドカップロシア大会。
FC東京から日本人選手が選出されることはなかったが、ロシアの地で奮闘していたのが東京のキャプテンである韓国代表DFチャンヒョンスである。
韓国はGSを2連敗スタートし、早々から敗退が決まってしまったが、最終戦で前回大会の覇者・ドイツに大金星。この歴史的快挙に大きく貢献したのがヒョンスであった。
GS2戦目まででの低調なパフォーマンスに国内から激しいバッシングを受け、相当な苦悩を抱えながらのプレーだったに違いない。
それでも監督はヒョンスを信頼し全試合で彼を先発起用した。
その期待に最後の最後で応えたヒョンス。
胸を張って日本へと戻ってきた。
東京サポーターはヒョンスを温かく迎えた。
「大会中は思い悩んだこともたくさんあった」とその苦しかった精神状態を後に吐露した通り、大会期間中は様々な記事でもヒョンスに対する厳しい見方が当てられたものを目にした。
酷いものでは「ヒョンスを起用しないように訴える請願書を国民が提出しようとしている」といった具合に、隣国である日本にもそのバッシングの激しさは伝わっていた。
だからこそ、東京のサポーターは彼が無事にチームに戻ってきてくれたことに胸を撫で下ろした。
ヒョンスのプロキャリアの始まりは2012年。
韓国の延世大学校から「パスワークを高めたい」と考え、ポポヴィッチ監督が就任したFC東京へ加入。
既に世代別代表などでもキャリアを積んでおり、大卒ルーキーでありながら高い経験値を要していたために安定した出場機会を確保。
ACLでは地元韓国チームの対策を伝えるなど5試合に出場。大きな仕事をこなし、ベスト16進出に貢献。
U-23ロンドン五輪代表メンバーにも選出されたが怪我で本大会前に辞退。
翌年は森重真人と確固たる地位を確立し、A代表に初選出されるなど飛躍の年になった。
2年間在籍し、2013年終了後に中国の広州富力への完全移籍が決まった。
活躍の場が中国に移ってからも彼の活躍ぶりは日本にも届いていた。
2014ブラジルワールドカップは本大会のバックアップメンバーに留まったが、その後のアジア大会で主将を任されて28年ぶりの大会制覇を成し遂げる。
これにより韓国国民の義務である「兵役」を免除される権利を獲得。これは一国民として非常に大きなことであった。
2016年にはリオデジャネイロ五輪メンバーにOA枠として選出され、選手たちからの支持を集めて主将を務める。
若手を統率するリーダーシップを発揮し、この頃からA代表でもキャプテンマークを巻く試合が増加するなど持ち前の「キャプテンシー」は見出されていた。
迎えた2017年9月。
広州富力で出場機会を失っていた(中国リーグでの外国籍枠削減の影響を受けた)ところ、古巣であるFC東京からのオファーを受け、再び青赤のユニフォームに袖を通すことを決断した。
復帰に際しては、
『3年6ヶ月ぶりに帰ってくることができました。こうして再びFC東京のチームの一員となることができて、本当にうれしく、幸せです。最高のファン・サポーターの前で、最高のチーム、最高の選手たちと一緒にサッカーができる喜びを感じています。FC東京が優勝できるよう最善を尽くしたいと思います。熱いご声援をよろしくお願いします』
とコメント。
チームにとっては下位低迷、シーズン途中での監督交代という厳しい状況にありながらも強い決意をプレーでも証明した。
大きな変化があったのが今年の頭だ。
新たに長谷川健太新監督が就任し、いままで5年間を通じて主将を務めてきた森重からその重荷をおろすことを決めた。
選手たちはもちろんのこと、ファンも注目した新キャプテン。
監督の口から明かされたその名前は
「チャンヒョンス」。
舞台裏として、こんな話がある。
ヒョンスは長谷川監督からキャプテン就任の打診を受け、その際に「私は日本語を十分に喋ることができないがそれでも良いか」と尋ねた。
すると監督は「それでも構わない。プレーでチームを引っ張ってくれ。」と説得。
確かに日本の地で外国人選手が主将を務めるというのはなかなかないケースかもしれない。コミュニケーションの部分で若干のハンディを背負う可能性も否めないからだ。
それでも"大役"を背負うことを決め、今季ここまで上位戦線を走るチームを引っ張ってきた。
選手たちとも積極的に会話しており、コミュニケーションレベルで大きな不安は見られない。
その中で上述したロシアワールドカップやリーグ戦8試合未勝利という苦しい経験も襲ったが、今日ここまで闘い続けている。
だからこそ、
突如として届いた一報には驚かされた方々も多くいたであろう。
「兵役免除の際に必要な社会奉仕活動報告書の中で事実とは異なる記載を行い提出していた」として処分を受けるというもの。
↑ 2016年の記事であるが韓国人アスリートの兵役免除の仕組みにフォーカスした記事である。参考にして考える。
整理すると、「2016年アジア大会 金メダル獲得」により、兵役免除が決まったヒョンスは免除の際に必要な申請書類に記載する社会奉仕活動の虚偽報告が認められた。
具体的に報道に上がったのは、
「雪の日にも関わらず野外でのサッカー活動の実施」
「実際の活動時間より短い活動時間だったにも関わらず記録の水増しを行なった」
などである。
この辺りの真偽に関しては我々には確認できないが、本人が認めている以上は異論はない。
これにより韓国サッカー協会より課された処分は「韓国代表活動 資格停止処分」という非常に重たいものであった。
この11月からの代表活動には参加することができない。
今後はクラブでの活動に限定されるということで確かに東京にとっては有益な話かもしれないが、「国際舞台での経験を積むことができなくなった」ことを考えれば一選手としての損失は大きいはず。
ましてや韓国代表チームの副キャプテンという存在が永久に追放されるわけだから、韓国代表チームにとってもプラスなことはない。
はっきり言って日本人にとっては「兵役」に関する知識は乏しい人が多いであろうし、今回の事案も詳しくは分からない人がほとんどではないか。
私もそうである。
それでいて「人間としていけないことを...」とか、「許されることではないから...」と軽率に発言して良いものなのか。
もちろん処分の内容を見れば厳しいものであることもわかるし、韓国国内でも厳しい意見が出ていることも承知している。
もう韓国代表の赤いユニフォームを着ることはない。
こうなった以上は彼が在籍をし、かつキャプテンを務めるクラブのファン、サポーターは彼を支えていくことが必要なのではないか。
「甘い!」と言われるかもしれないが、外野的にこの問題に首を突っ込むよりも背中を押してあげることが求められていると思う。
チャンヒョンス という男のプロ選手としての
歴史は東京で始まり、今も東京で描かれ続けている。
彼の今までの苦悩や気持ちを知るからには簡単に見放すことなどできないのである。
どんな時でも前を向く。
"ACL出場圏獲得" この目的がある以上、全員が同じ方向を向くことが必要だ。
Vamos Tokyo!! Vamos Hyun-soo!!
0コメント